消費税は低所得者ほど不利というのはウソ? 税の逆進性とは

消費税は低所得者ほど不利なのか?

どうも、ファイナンシャルプランナーのシャチ公です。2019年10月より開始される消費増税に関係してよく耳にする「軽減税率」や「逆進性」という言葉。これらはいずれも「消費税は低所得者ほど不利・不公平」という意見に関係するものです。一体どういうことでしょうか。そこで今回は、消費税が低所得者ほど不利であるという通説について、その理由と真実を紹介します。

 

消費税と所得税の違い

税の逆進性について知る前に、日本における税金の中でも、より身近な税金と言える「消費税」と「所得税」の2つをよく理解する必要があります。この二つは、間接税と直接税という違いもありますが、税率で大きな違いがあります。詳しく見ていきましょう。

 

消費税とは

消費税は、モノやサービスを消費した人が負担する税金です。多くの人にとっては、最も身近な税金とも言えるでしょう。2019年9月末までは8%、10月以降は10%の消費税がかけられています。消費税の特徴は、どんな人であってもモノやサービスを購入する時には一律に税金がかかる点です。収入が高いから消費税が多くかかるとか、貧乏だから消費税を減税してあげるとか、そういった制度はなく、全ての人に対して公平に課税されます。

 

所得税とは

所得税は、その人が1年間に得た所得に対して課せられる税金です。サラリーマンであれば事業所が源泉徴収を行い、自営業などは自身で確定申告をするとともに納める必要があります。具体的に所得税は、課税される所得金額が195万円以下で最小5%、4,000万円を超える場合には最大45%(この後、控除額を差し引いて税額を求めます)が税率となっています。つまり、所得が高ければ高いほど納める税金は高くなります。これを累進課税と言い、所得の差を考慮した税率設定になっている訳です。

 

 

逆進性とは

このように見てくると、全ての人に公平な税率を課す消費税も、高額所得者ほど高い税率を課す所得税も、どちらも欠点が無いように思えます。しかし実は、税負担を考えるときには「その人の所得に対してどれくらいの税金を負担しているか」を考える必要があります。つまり、所得に対する納税の割合です。所得税はそもそも所得に対応して税金が決まるので、その点で、低額所得者にも高額所得者にも平等といえます。一方、消費税はどうでしょうか。高額所得者ほど多く消費するのだから平等だろう、と一見思えるかもしれませんが、実はそうではありません。場合によっては、消費税は、低額所得者の所得に対する税負担の割合を高めてしまう可能性があるのです。これを、税の「逆進性」と呼びます。

具体的な例を見ていきましょう。たとえば、所得が200万円の人(低額所得者)と、所得が2000万円の人(高額所得者)がいたとします。低額所得者は所得の約6割である140万円を消費に使いますが、高額所得者も同じく6割である1200万円使うとは限りません。仮に高額所得者が消費を400万円で済ませているとすれば、消費税(10%)は低額所得者が14万円、高額所得者が40万円納めることになります。一見して、高額所得者の方が納めている額が大きいので公平だと思えますが、所得に占める消費税負担の割合を考えると、低額所得者は7%、高額所得者は2%と大きな開きがあります。このように、一律の消費税は低額所得者ほど負担が大きくなるという逆進性の性質を持っているのです。

 

 

消費税の軽減税率で逆進性は緩和される

この消費税の逆進性に着目して、対策を講じたのが「軽減税率」です。低額所得者と高額所得者を比較した時に、低額所得者の方が多くの割合を負担していたのが生活必需品です。この生活必需品に対して、軽減税率(通常10%のところを8%に下げる)にすれば、低額所得者の負担を少しでも和らげることができる、という考え方です。これについても、高額所得者だって生活必需品を使う訳で、あまり効果がないのではという反対の声がありますが、逆進性を抑える一つの取り組みとして講じられているのです。

 

消費税の使い道を忘れてはいけない

このように見てくると、消費税は低所得者ほど不利になるのではないか、と思えるかもしれません。確かに、納税する場面においてはその通りかもしれません。しかし、税金にはその先があります。消費税は、4つの社会保障に使われています。具体的には、年金・医療・介護・子育て支援です。実はこれらの恩恵は、低所得者の方が所得に対して大きく受けられるのです。たとえば何かの給付金5万円を得たとして、低額所得者にとっての5万円と高額所得者にとっての5万円では、重みが違いますよね。それから、低所得者向けの保障も充実しており、税金の使い道に着目すると、必ずしも低所得者が不利になっていないことが分かります。当然、これが維持されるためには、税金の無駄遣いなどがないように政府を見張る必要はありますが、こうした点を忘れてはいけません。

 

以上、税金の逆進性について紹介しました。税はただ納めて終わりだけでなく、税金の使い道まで考えてこそ賢い消費者といえます。様々な検討の末、工夫がされているということを忘れないようにしましょう。当ブログでは、他にもお金にまつわる記事を多く書いています。ぜひ合わせてご覧になっていってくださいね!

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