マクロ経済スライドについて簡単に解説します。
どうも、ファイナンシャルプランナーのシャチ公です。お金にまつわる気になる言葉を5分で学ぶシリーズ、今回は「マクロ経済スライド」についてです。年金に関する言葉としてよく耳にするマクロ経済スライド、一体どういうものなのでしょうか。年金をもらう誰もが関わってくる言葉なので、覚えておいて損はありませんよ。できるだけ分かりやすく紹介しますので、最後までお読みいただけたら光栄です。
マクロ経済スライドの概要
マクロ経済スライドとは、平成16年に導入された年金給付の際の仕組みで、人口の減少や平均寿命の伸びなどの社会情勢に合わせて年金を自動的に調整する仕組みを言います。たとえば、高齢社会においては年金の給付額が増えていきますが、それを負担する若い世代は少子化で減っています。そうなると、収支のバランスが崩れてしまい、年金制度自体が崩壊してしまいます。かといって、若い世代にばかり大きな保険料の負担を押し付けるのもよろしくありません。そこで、国が負担する割合を引き上げるとともに、積立金をうまく活用して対応していきながら、年金の給付額を調整していくことになっているのです。
マクロとは、ミクロの対義語で、大きな目で見ることを言います。つまり、年金という分野だけを見るのではなく、年金制度を支える若い世代の減少と平均寿命の伸びによる高齢者の増加という大きな目で経済を捉えて調整することを指すわけです。
マクロ経済スライドの基本的な仕組み
年金の変動という意味では、賃金の上昇や物価上昇なども関係してきます。いわゆる「賃金スライド」とか「物価スライド」と言われるものです。収入に対して保険料がかかってくるので、賃金が上がれば将来もらえる年金も増えることになります。景気が良くなれば、その分、年金額も増えていくということになります。
マクロ経済スライドの基本的な考え方は、この物価上昇などに伴う年金額の変動を調整することによって、将来の年金制度を維持する仕組みです。賃金や物価の改定率から「スライド調整率」を差し引くことによって、年金の給付水準を調整します。言い換えれば、賃金や物価などの上昇分以内に年金の上昇分を抑えるということです。これによって、余剰分を将来の負担に充てることができるわけです。なお、賃金や物価の上昇率が低く、この調整をするとマイナスになってしまうようなケースでは適用されない仕組みになっています。
マクロ経済スライドのメリット
マクロ経済スライドを導入することによるメリットを紹介します。
・将来世代の負担を増やさない
年金制度は、若い世代が高齢者を支える形で維持されています。しかし、少子高齢社会においてはその構図がすでに厳しいものとなっています。その解決策として挙げられたのがマクロ経済スライドですから、年金制度の維持に一定の効果があるといえるでしょう。もし途中で年金制度が破綻してしまえば、若い世代に不公平感が漂うことは必至ですから、その対策としても期待されています。
・年金額が減ることは基本的にない
マクロ経済スライドは「将来世代の負担を増やさない」ことによって「年金制度を維持する」ことに着目したシステムです。まるで今の世代への給付を減らして将来に残そう!と言っているようにも聞こえますが、絶対的な年金額が減ることはありません。すでに紹介した通り、賃金や物価の上昇分を利用したシステムで、仮に景気が悪くても下限が決められています。2018年からは名目額を下回らないようになっており、制度が破綻などしない限りは年金が減ることは無いと考えて良いでしょう。ただ注意したいのは、年金額は減らなくとも物価は上昇する可能性があるということです。年金によってカバーできる部分が変わってくることになるので、減らないと言ってもただ喜ばしいことだとはいえないのです。
マクロ経済スライドのデメリット
一方で、マクロ経済スライドには賛否両論があり、デメリットを指摘する人もいます。
・発動する場面が限られる
マクロ経済スライドの仕組みが機能する大前提に、賃金の上昇や物価の上昇などの好景気、インフレがあります。しかし、マクロ経済スライド導入以後、景気が悪かったこともあって発動機会がほとんどなく、初めて発動したのが平成27年のことです。この仕組みが導入されたのが平成16年のことですから、それから10年以上経過してのことです。好景気を大前提としている仕組みなので、不景気が続けば将来世代の負担を増やさないための仕組みなどまったく意味をなしません。
・年金額は目減りする
マクロ経済スライドによる年金額の減少は基本的にないと紹介しましたが、昔であれば本来もらえるはずだった年金がもらえなくなったり、物価の上昇などによって実際には年金でカバーできる部分が少なくなったりすることはあります。つまり、年金額は減らなくても目減りするということです。少子高齢化による弊害ですから仕方ないとはいえ、マクロ経済スライドのデメリットとして理解しておく必要はあるでしょう。
・いつか破綻する日が来る可能性も
政府としては2040年前後まで、マクロ経済スライドを続ける必要があるとしています。しかし、マクロ経済スライドが発動するのはあくまで景気が良い時の話であり、景気が悪ければこれよりも延期する可能性や、そもそも年金制度が破綻する可能性も考えられます。いきなり破綻すれば若い世代からはブーイングですから、支給開始年齢の引き下げなどで対処するとは思いますが。年金を当てにせず、自分自身で資産形成をしておくというのも大切なことですね。
以上、年金と密接にかかわっている「マクロ経済スライド」について簡単に解説しました。これから年金制度はより不安定なものになっていくと予想されます。若い世代ほど、資産運用の効果というのは絶大ですから、早い内につみたてNISAやiDeCoなどの資産形成を始めると良いかも知れませんね。当ブログでは、他にも税金や保険などお金にまつわる記事を多くアップしていますので、ぜひ合わせてご覧になっていってくださいね!
1件のコメント