iDeCo(イデコ)をオススメしない理由についてです。
どうも、ファイナンシャルプランナーのシャチ公です。先日、公務員をしている後輩から「iDeCoってどうなんでしょう?」と相談を受けました。私は、FPとしての基礎知識を教え、後輩の話を聞いた結果、最終的にはiDeCoをオススメしませんでした。そこで今回は、iDeCoをテーマにオススメできない理由と代替案について紹介したいと思います。なお、この記事に、iDeCoを非難する意図はありません。ニーズに合わせた選択肢の提案の場として考えていただけたらと思います。
iDeCoとは?
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金と呼ばれる資産運用の一つです。将来もらえる年金を増やすために毎月一定額を積み立てていくスタイルをとります。貯金と違うのは、元本保証がされていない点です。iDeCoは投資信託や保険などの金融商品に対して投資することになるので、万が一それらが値を下げれば元本を下回ってしまうリスクがあります。とはいえ、長期に渡って安定的な運用を目指すので、一般的には銀行預金よりも高い金利を狙えるとされています。
日本に住んでいれば20~60歳の誰もが始めることができます。iDecoを始めるには、金融機関や証券会社に専用の口座を作る必要があります。手数料などの差があるので、始める際にはよく比較する必要があります。
なお、毎月の掛金は、5,000円から1,000円単位で設定できますが、職業によって上限があります。今回テーマとする公務員の場合は、毎月1万2,000円が上限です。サラリーマンは企業年金のあるなしによっても違いますが最大で毎月2万3,000円、自営業は毎月6万8,000円が上限となっています。自営業はそもそも年金の階層が1階建て部分しかなく、2階建て部分のあるサラリーマンや公務員に比べると心もとないため、このような優遇された上限が用意されている訳です。
iDeCoのメリット
一般的にいわれるiDeCoのメリットについて紹介しておきます。特性をよく理解して、自分のニーズに合っているかどうかを判断していきましょう。
・掛金が全額控除される
iDeCoのメリットとして必ず挙げられるのが、掛金を控除できるという点です。普段お金について学ぶ機会のない人にとっては、そもそも控除とは?となると思いますので、少し詳しく説明します。控除とは、課税される所得から差し引くということを意味します。
たとえば、ある公務員の課税所得(年収から様々な控除をして税金の対象となる金額)が300万円だとします。このままだと、約20万円の所得税を納めなくてはなりません。しかし、iDeCoを月1万円(年12万円)拠出していた場合、この12万円は所得金額から控除することができるので、課税所得が288万円に下がります。これにより、納めるべき所得税は約19万円になります。同様に住民税にも恩恵があるので、トータルで約2.4万円の節税効果が期待できます。所得税は、所得が大きくなるほど高くなるため、この恩恵は収入が大きい人ほど大きいといえます。
・運用益が非課税になる
iDeCoの魅力のもう一つが、運用益が非課税になるという点です。運用益とは、iDeCoで運用してプラスになった部分のことを指します。マイナスになったら関係ない話ですが、長期に渡って投資することになるのでプラスになる可能性も多くあります。
ふつう、投資の運用益には20.315%の税金がかかります。株やFXなんかも利益が出たら約2割税金として納めなくてはなりません。しかし、iDeCoではこの運用益が非課税となっているのです。それも、60歳まで(最長70歳まで)と、若く始めれば始めるほどその恩恵が大きいことになります。
・資産の受け取り時にも節税メリットがある
iDeCoは運用益が非課税となるほか、60歳になって資産を引き出す際にも節税メリットがあります。iDeCoの受け取りについては、「一時金」「年金」「一時金と年金の両方」のいずれかから選べます。普通、一時金のようにまとまったお金が入る場合や、年金のように定期的にお金をもらう場合には、所得と見なされてこの際にもなんと税金がかかります。
しかし、iDeCoなら、一時金で受け取る場合には退職所得控除が、年金形式で受け取る場合には公的年金等控除が受けられるので、かなりお得に受け取ることができます。
iDeCoのデメリット
メリットが多いように思えるiDeCoですが、隠れたデメリットも多くあります。メリットだけにとらわれるのではなく、デメリットもよく理解したうえで選択するようにしたいですね。
・手数料がかかる
iDeCoで毎月積み立てる場合には、毎月手数料がかかることを忘れてはいけません。具体的には、国民年金基金連合会手数料と事務委託金融機関手数料が共通で、運営管理機関手数料が金融機関ごとにかかります。共通でかかる手数料は数百円程度で、金融機関ごとの手数料は無料のケースもあれば、数百円で設定されているところもあります。これらを合わせて、毎月数百円程度の手数料がかかることになります。
毎月で見ると小さなコストですが、もし毎月300円を30年間コストとして支払い続けると約10万円かかることになりますので、それ以上の運用益を目指さなくてはなりません。よく月5,000円から始められることをウリにしていますが、拠出する掛金が少ないほどコストが占める割合は高くなるので注意が必要です。また、加入する際にも数千円のコストがかかるのも忘れてはなりません。
・60歳まで引き出せない
iDeCoは一度始めてしまうと、60歳まで引き出すことが原則としてできません。年金という性質を持っていますから、当然といったら当然なのですが、これがものすごいデメリットだと思います。要するに「機会損失」する可能性が多分にあるということを意味します。たとえば、それまでに万が一のことがあって亡くなってしまえば、いくらお得と言えど自身が使う機会には恵まれません。また将来何が起こるか分かりませんから、iDeCoの資産をライフイベントに合わせた資金としては使うことが出来ません。身動きのとりづらい資金というのが一番のデメリットでしょう。
「年金」が目的ならiDeCoもアリ!
さて、ここまでiDeCoのメリットとデメリットを紹介してきました。特徴や性質がご理解いただけたかと思います。さて、ここでiDeCoを始めるべきかどうか?についての問題になります。これはもう、人によってケースバイケースであり、一概に是非をいえる問題ではありません。
たとえば、冒頭で説明した通り、私は後輩に対してiDeCoを勧めませんでした。なぜかというと、後輩が公務員であったこと、老後への備えではなく貯金をしたいと話していたこと、性格的にお金の管理がしっかりできる人であったこと、などが挙げられます。まず、iDeCoは年金の少ない自営業ほど利点が大きく、公務員はそもそも年金が比較的安定しているため、必ずしも年金を上乗せする必要はないのではないか、ということ。加えて、老後資金ではなく貯金の意味合いで利用したいのであれば、60歳まで引き出せないiDeCoはネックになる可能性があること。さらに、性格的に資金管理ができる人なので、ライフプランに合わせて資金をやりくりできるほかの選択肢の方が向いているのでは、と思ったことなどが理由です。
このように、その人のニーズや性格をよく考えたうえで、正しい選択を行っていく必要があります。iDeCoは資産運用の中でも「年金の上乗せ」という位置づけが強いです。60歳まで引き出せない代わりに恩恵の多い制度ではありますが、いつでも使える貯金を目的としている人や、老後といより将来への備えを心配している人にはそこまでオススメできません。資産運用にはたくさんの種類があるので、ニーズに合わせて選択していく必要があるでしょう。
iDeCo以外にオススメな資産運用
ニーズによって適した資産運用がある、と説明しましたが、ここからはiDeCoのデメリットを埋めるような資産運用をいくつか紹介したいと思います。
・つみたてNISA
iDeCoと必ず比較される資産運用です。こちらも20年間の非課税で、毎月積み立てていくという点で似ています。つみたてNISAの場合は、掛金を控除できないという点はあるものの、いつでも引き出せるという利点があります。特に私の後輩のような公務員の場合は、つみたてNISAの方が上限も約3万円ですし、ライフプランに合わせて対応できるので貯金に向いているといえます。
・株式投資
株を使った資産運用もオススメです。株式投資は副業に該当しないため行っている公務員も多くいます。株を持っていると、定期的に株主優待がもらえ、企業が好調だと配当金ももらえます。利回り2~3%の株も多いので、銀行に預けておくよりは効率が良いかも知れません。NISAの制度を使って非課税枠の中で運用すれば、運用益も非課税となります。その分リスクはありますが、保有資産のいくらかを株に換えておくのも一つの手といえます。
・金(ゴールド)
全ての資産を日本円で保有しているのも怖い!という場合には、金(ゴールド)がオススメです。最近では純金積立のように月数千円でも始められるケースが増えていますね。金は、世界共通の資産と呼ばれており、価格の安定性には定評があります。有事の金とも言われるほどで、お金の価値が下がっても金の価値は変わらないと言われています。iDeCoや株のように運用益は目指せませんが、守りの資産と名高い金を将来に備えて一部保有しておくのもアリだと思います。
以上、公務員の後輩にiDeCoを勧めなかった理由を紹介しました。iDeCoは年金目的の人にはかなり恩恵の多い制度でもありますから、自身のニーズに合わせて選択するようにしましょう。当ブログでは、他にもお金にまつわる記事を多くアップしています。今回の関連記事も多いので、ぜひお時間があれば合わせてご覧になっていってくださいね!