アルバイトが書店の売上をアップさせた5つの工夫

書店の売り上げをアップさせた5つの工夫について紹介します。

 

どうも、ファイナンシャルプランナーのシャチ公です。私は大学生の時、書店でアルバイトをしていました。街のデパートに入っているような小さな本屋さんでしたが、アルバイトを始めてちょっと経つとコミック担当に任命されました。それから数年間、コミック担当として売上を上げるために努力していましたが、やっとある年、ミックの前年比が120%を超えることができたのです。今回は、そんな売上改善をできた時に行った5つの工夫について紹介したいと思います。

 

書店業界は右肩下がり

街から書店が消え始めてもうしばらく経ちましたが、依然として書店業界は厳しい状況にあります。この20年間で書店の数はおよそ半分になり、破産をする大手書店も増えています。書店が苦しくなった理由として、大きく2つ挙げられます。1つは「ネット書店の台頭」です。Amazonなどで気軽に本を買うことができ、取り寄せも容易になりました。書店にわざわざ出向く必要もなく、書店で取り寄せに一週間以上かかるところを、翌日配送できるネット書店は相当強力です。もう1つは「若者の活字離れ」です。スマートフォンに代表されるように、読書する時間が別のものに取って代わられ、紙の本はニーズを下げました。マンガもアプリで読める時代となり、ますます紙の本の需要は減ってきています。

他にも、書店は「薄利な商売」であることも挙げられます。書店は、委託販売と呼ばれる販売形式をとっており、簡単に言うと原価の高い商売です。売れなかったら在庫を出版社に返品できる代わりに、利益が薄いのです。最近では、文具や書籍以外の商品を扱う書店も増えてきていますが、それは原価が高いからです。また「万引き」や「再販売価格により値引きができないため差別化が難しい」ということも本屋を窮地に立たしている一因といえるでしょう。このように、書店は大きな逆風に立たされており、特に資金力のない小さな書店は廃業を余儀なくされているのです。そんな中、売上を向上させることは書店の課題とされている一方、容易なことではありません。

 

 

売上をアップさせた5つの工夫

そんな厳しい書店業界の中、コミック担当に任命された私はいくつかの工夫を行いました。お客様に来店していただくにはどうしたら良いか、コミックを買ってもらうにはどうしたら良いか、考えを巡らせて様々なことを試してみました。一見すると奇抜なアイデアだったものもありますが、店長はGOサインを出してくれて、色々チャレンジできました。今回はその中から、特に売上向上に有効だった5つの工夫を紹介します。書店に限らず、様々な業種の販売促進に有効な策もあるのでぜひ小売業などをしている人は参考にしてみてください。

 

①試し読みを導入した

昨今急に台頭し始めた、マンガアプリ。アプリを使って無料で数話読めて、課金することでマンガを読める優れたサービスです。そんなマンガアプリにお客様が取られている!と考えた私は、まず「試し読み」を導入することにしました。試し読みといえば、マンガアプリなどでも採用されている方式ですが、私は1巻まるまる試し読みできるようにしました。通常、リアル書店で売られる漫画にはシュリンクと呼ばれるビニールがかぶさってあり、中を読むことができません。それを1巻だけ読めるようにしたのです。これにより、ただ待ち合わせのために書店に来た人やフラっと入店した人の客滞在率を上げることができ、購買意欲を掻き立てることに成功しました。今までは、どんな話か分からないから買えない、と躊躇していた見込み客を取り込むことに成功したのです。

この話をすると、特に本部や高齢の上司には良い顔をされませんでした。なぜなら、1巻を無駄にするのではないか?と思われたからです。1巻をまるまる試し読みできる状態にすることで、1巻を買わなくても良い状態にしてしまうのではないか、ということです。確かにそんな側面もあるかもしれませんが、これはロスリーダー的な役割です。ロスリーダーとは、損をしても宣伝効果のある客寄せパンダのような意味です。1巻試し読みをできない時よりも売り上げが上がるのであれば、何も問題はないのです。現に、進撃の巨人が流行したときに、進撃の巨人すべての巻を試し読みできる状態にしたイベントを行いました。これ相当奇抜なアイデアで、現に当時の社長から後日お叱りを受けました。実際今考えても、出版社を始め多くの人にバッシングを受けそうです。しかし、この企画を行ったときも進撃の巨人が売れなくなるようなことはなく、むしろ試し読みによってお客様がたくさん来てくれてコミックの売上はかなりアップしたのです。

 

②ノベルティを充実させた

再来店してもらうには「顧客満足度の向上」が急務であると考えました。そこで考えたのが、ノベルティの拡充です。ノベルティとは、コミックを買うとついてくる特典のようなものを指し、しおりやポストカードなどが代表的です。力のない本屋は、メディア化などのセットをあまり積極的にとることができず、結果としてノベルティを揃えることができないことがあります。しかしそれだと、他の書店にお客様が流れてしまったり、満足度が下がってしまったりします。そこで、業界に回ってくる情報にはより積極的にアンテナを張り、取得できるノベルティは取り寄せようと努力しました。結果として、「あの本屋で購入すればアイテムがもらえる」「ノベルティをもらえたからまた来よう」というお客様が増え、売上に貢献できたのです。

 

 

③POPを工夫した

私がお客様の購買意欲をあおるために行ったのが「仕掛け販売」です。これは書店に限らず、スーパーに行っても同じことが言えますよね。値段の表記が分かりやすかったり、店員のコメントが書かれていたりすると、つい買ってみようかなと思うものです。こうした表示をPOPといいます。POPとはPoint of purchase advertisingの略で、販売促進のための広告媒体のことを指します。当時、ヴィレッジヴァンガードやドンキホーテが流行っていたのも、このPOPによる効果が一因だと思います。書店でもこうしたPOPはよく見かけますが、特に工夫したのは「あらすじや本の内容を書かない」ということです。なぜなら、あらすじは本の裏を読めばわかる訳で、POPで小さい文字をダラダラ書いても仕方ないからです。そこで、目に留めてもらうためだけを目的としたインパクトのあるPOPを作成しました。

今でも思い出に残っているのが「衝撃」という2文字と矢印を書いたPOPです。手抜きじゃないか?といわれそうですが、ただ目に留めてもらうだけならこの程度でも十分なのです。こうしたインパクトのあるPOPを付けることで、得られた効果は主に2つです。1つが「本を手に取ってもらいやすくなったこと」。本が売れるのは、書店員のPOPではなく、書籍そのもの販売力です。多くの人は、裏表紙のあらすじや帯などで買うかどうか判断しています。POPは販売力のある書籍を手に取ってもらうことが役目なのです。もう1つが「この本屋は頑張っているなと身近に思ってもらえたこと」です。POPを付けることで、ちゃんと手入れをしているというアピールになり、一部のお客様には売り場を身近に感じてもらえるようになりました。

 

④ペルソナを再認識した

ペルソナとは、商品のターゲット層を定義することを言います。今回の場合は、どんな層にコミックを売り込みたいのか、ということです。ペルソナを意識することで、ターゲットに合わせた商品展開や売り込み方ができます。そこで私は、ネット書店が台頭してきたことを裏返して考え、リアル書店の客層は、ネットを扱えない高齢者と携帯を与えられていない小学生、また親の許可がないと勝手に課金できない中学生だと考えました。高齢者はあまりコミックを買わないので、小中学生に的を絞って戦略を組むことにしたのです。小中学生が読むような少年コミックや少女コミックの商品ラインナップを見直し、試し読みも増やしました。ペルソナを考えることはどの業界でも大切なことといえるでしょう。

 

⑤担当のキャラ付けをした

一度来店していただいたお客様にリピーターになってもらうために意識したのが「ファンを増やす」ということです。書店のファン?と疑問に思うかも知れませんが、誰しも愛着のあるお店ってあると思います。この愛着を持ってもらうために、POPを工夫したりノベルティを拡充したりしたわけですが、極めつけは「担当」というフレーズを強調したことです。スーパーの野菜売り場を考えてみてください。地元の農家さんが作った野菜が置いてあるコーナーがありませんか。「〇〇さんが作ったニンジンです」と書いてると、なんだか温かい気持ちになりますよね。それと似たような感じで、書店でも「担当イチオシ!」「今年も担当は頑張ります!」などのPOPやミニポスターを貼って、担当のキャラ付けをしました。これをすることで、「このコミック売り場、力入ってて良いな」と良いイメージを付けることができたのです。

 

これら5つの工夫を実践することで、具体的に年間前年比120%を達成することができました。正直この経験は、私にとって今でも誇らしい経験です。これらの工夫は、書店のみならず他の小売店でもマネできると思うので、ぜひ売上が伸び悩んで頭を抱えている方は実践してみてはいかがでしょうか。当ブログでは、お金にまつわる記事も多くアップしているので、合わせてご覧になってください。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です