指定相続分・法定相続分・遺留分の違いについて紹介します。
どうも、ファイナンシャルプランナーのシャチ公です。誰もが他人ごとではない相続。中でもよく耳する言葉なのに違いが分かりにくいものに「指定相続分」「法定相続分」「遺留分」の3つの言葉があります。それぞれの違いを、正しく説明できる人は意外と少ないかも知れません。相続って経験する機会があまりないのでなかなか知らない人も多いとは思いますが、これらはいずれも相続の基本的なところなので覚えておいて損はありません。そこで今回は、この3つの違いについて詳しく紹介したいと思います。
指定相続分とは?
指定相続分とは、被相続人(亡くなって遺産を相続したい人)が遺言によって、分割の方法を指定したものを言います。遺言がある場合、これから紹介する法定相続分よりも優先されます。きちんと平等に指定されていれば良いですが、遺言に特定の子に対して偏った遺産分割を明記していてトラブルに発展するケースもあります。もし、遺言に対してすべての相続人(遺産をもらえる権利を持つ人)が納得できないような場合は、遺産分割協議によって全員の合意を持って遺産分割をする「協議分割」という方法を取ることも可能です。
法定相続分とは?
法定相続分とは、民法で定められた相続人がもらうべき理想的な取り分のことです。注意したいのは、あくまで法定相続分はこうした方が良いんじゃない?という設定に過ぎないので、この通りに相続が行われなくても問題ありません。遺言などがなく、とくに相続人による要望がなければ、法定相続分の通りに分割するのが一般的です。すでに紹介した通り、遺言をベースにして偏った遺産分割をするのも良いですし、相続人同士で話し合って協議するのでも良いわけです。また、遺言がなく、相続人同士でもめるようなケースでは、家庭裁判所に調停を申し立てることにより分割する「調停分割」や、それでも整わない場合に家庭裁判所にゆだねる「審判分割」などの手段を取ることもできます。なお、法定相続分は相続人の数や順位などに応じて変わります。配偶者は常に相続人となり、血族相続人には順位が決められています。第1順位は子、第2順位は直系尊属(両親や祖父母)、第3順位は兄弟姉妹です。相続人の数による法定相続分は以下の通りです。
・配偶者と子が相続人の場合→ 配偶者1/2、子1/2
・配偶者と直系尊属の場合→ 配偶者2/3、直系尊属1/3
・配偶者と兄弟姉妹の場合→ 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
もし子や直系尊属、兄弟姉妹が複数人いる場合は、上記の法定相続分からさらに人数で均等に割ります。ですから、配偶者と子が2人いる場合では、配偶者の1/2は変わらず、子の取り分は1人あたり1/4となります。もし配偶者がいない場合には、同順位の血族相続人が全財産を相続します。また、子や兄弟姉妹で既に死亡している場合は、更にその子が代襲相続人となって相続人となる権利を得ます。加えて、養子であっても実施と同じ相続分を有します。
遺留分とは?
遺留分とは、民法で定められている、相続人に保障されている最低限度の取り分のことです。もし遺言に、自分の特定の子などに対して「一銭もやらない」と記載されていても、子である以上は相続人なので、遺留分が認められています。ただし、遺留分は、侵害されたと主張する人が遺留分減殺請求権を行使することによって確保できます。相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年以内、あるいは相続の開始の時から10年以内に遺留分減殺請求を行わなければ時効になります。遺留分の権利を持っているのは、子と直系尊属、そして配偶者のみで、兄弟姉妹は対象ではないので注意が必要です。
さて、気になる遺留分の割合ですが、各遺留分の合計は相続財産の1/2になるように定められています。個別的な遺留分については、相続人の構成などによっても異なるので計算が複雑ですが、全体の相続財産に対して1/2が遺留分ということになります。なお、相続人が直系尊属のみの場合では、相続財産の1/3になるので注意が必要です。
3つの違いまとめ
指定相続分:被相続人が遺言で指定した、各相続人の取り分
法定相続分:民法で定められた、一般的な各相続人の取り分
遺留分:民法で定められた、相続人が得られる最低限の取り分
以上、相続に関する指定相続分・法定相続分・遺留分について、簡単ではありますがまとめました。相続は他人ごとではないので、理解しておくべき言葉です。また、これからFP試験を受ける人にとっても必須の知識になりますので、覚えておくと良いでしょう。