相続時精算課税制度は多くの場合で損! 暦年課税との違いを徹底解説!

相続時精算課税制度について詳しく紹介します。

どうも、ファイナンシャルプランナーのシャチ公です。贈与税や相続税について調べていると、よく目にするのが「相続時精算課税制度」というものです。漢字が羅列していて、いかにも難しそうですが、国が用意している制度の一つです。しかしこの制度、実はデメリットばかりで多くの場合で損になること知っていますか? そこで今回は、相続時精算課税制度について詳しく見ていくとともに、損になる理由について紹介します。ファイナンシャルプランナーの試験を受ける人はもちろん、贈与税や相続税などについて学びたい人は税参考にしてみてください。

 

相続時精算課税制度とは?

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母か祖父母(贈与者)から、20歳以上推定相続人か孫(受贈者)への贈与について、最大2500万円まで特別控除される制度です。つまり、2500万円までは贈与税がゼロになる制度で、この適用を受けるかどうかは自身で「選択」することができます。もし、贈与金額が2500万円を上回った場合には、その金額にかかわらず一律で20%の贈与税がかかります。この相続時精算課税制度は、一度選択すると変更できませんが、贈与する種類や金額、回数などには縛りがないのが特徴です。

相続時精算課税制度は、贈与税のくくりではありますが、「相続時精算」という名前がついているだけあって、相続時にこの制度で贈与された財産額を加えて再計算することになります。この時、相続財産に加算する金額は、贈与時の価額です。つまり、この制度を利用して生前贈与したように見えても、相続が発生した時にすべての贈与財産が贈与税の計算の対象となるため、税金を支払う時期を引き延ばししているのと変わりません。

相続時精算課税制度の適用を受けたい場合には、最初の年分の翌年2月1日から3月15日までに「相続時精算課税制度選択届出書」を提出し、それ以降は、仮に贈与税がかからない場合でも申告が必要となります。「選択」という表現がしてあるのは、この制度を利用すると、それ以降は贈与税の基礎控除が使えなくなるためです。改めて、贈与税について見ていきましょう。

 

 

贈与税(暦年課税制度)との違いは?

贈与税とは、贈与者から受贈者へお金や財産を送った時に発生する税金です。毎年、110万円までは基礎控除があり、贈与税はかかりませんが、110万円を超えると、金額ごとに贈与税がかかってきます。相続時精算課税制度に対して「暦年課税制度」と呼び、ちらか一方しか選択することができません(届け出を出さなければ、暦年課税制度が適用されています)。

相続時精算課税制度では、相続時に全ての贈与財産が再計算の対象となっていましたが、暦年課税制度では、相続開始前3年以内の贈与財産に対象が絞られています。また、暦年課税制度では受贈財産を物納することができますが、相続時精算課税制度では物納ができません。

 

相続時精算課税制度はどんな人にメリットがある?

相続時精算課税制度と暦年課税制度の違いを見ていくと、以下のようにまとめられます。

相続時精算課税制度:生涯を通して累計2500万円までが非課税(それを超えると一律20%課税)
暦年課税制度:毎年110万円までが非課税(それを超えると金額により10~55%まで課税)

このことから、まとまった財産を贈与したいときには有効であるといえます。また、今後値上がりする物件や、安定した収益が入る不動産などをこの制度でまとめて贈与することで、相続税対策とすることもできます。相続時精算課税制度では、相続時に再計算されてしまうのが難点ではありますが、財産がそう多くないなど相続税がかからないと予想されるケースでは、節税効果が大きくなります。

 

相続時精算課税制度はデメリットが多い!

相続時精算課税制度は、金額の範囲だけで見ればなんだかお得な制度のように見えますが、正直なところデメリットの多い制度でもあります。暦年課税制度と比べて、どちらがお得になるのかは自身の置かれた状況などにもよりますが、恩恵を受けられるケースはそう多くありません。相続時精算課税制度の注意点について見ていきましょう。

 

・相続税対策にはなりにくい

相続時精算課税制度は、相続時に贈与したすべての金額が再計算の対象となってしまいます。相続財産と合算して、改めて相続税が発生するので、相続税対策として用いるのは適切ではないといえます。先ほど紹介したように、これから値上がりする不動産や収益物件の場合には、早く贈与できる分相続税対策になり得ますが、それ以外のケースではこの制度を利用したからと言って相続税を減らせるわけではないので要注意です。それならむしろ、暦年課税制度で毎年110万円までを少しずつ贈与して、相続財産を減らす方がよっぽど効率的です。なお、財産が少なく相続税がかからないと予想されるケースでは、この制度の恩恵を存分に活用することができます。

 

・一度選択したら取り消せない

相続時精算課税制度は、一度届け出るとその選択を取り消すことができません。いや、一度選択したら別に取り消さないでしょ、と思うかも知れませんが、問題は「長生きした場合」と「法改正がされて相続税の基礎控除額が減らされた場合」です。相続時精算課税制度は、累計で2500万円までが非課税ですが、暦年課税制度では毎年110万円が非課税です。この110万円は贈与者問わずすべての贈与を合わせるので、受贈者が他の人から贈与を受けていないことが前提ですが、毎年暦年課税で贈与するとおよそ22年間で同じ金額になります。しかも暦年課税なら、相続財産を減らせるのでお得です。長生きするほど、暦年課税にしておいた方が良かったと後悔する羽目になるかもしれません。また、法改正が途中でされて、相続税の基礎控除が減らされる場合も要注意。相続時精算課税制度は、相続の時にそれまでの贈与を合算するので、途中で基礎控除が少なくなると思っていたより相続税が多くかかってしまう恐れがあるのです。選択する際には、将来のこともよく考えて検討する必要がありそうです。

 

 

・贈与税がゼロでも毎年申告が必要となる

相続精算課税制度を一度選択すると、仮に贈与税がかからない場合でも毎年申告が必要となります。相続時に再計算をするためですね。忙しい人にとって、毎年申告する手間とは意外と面倒なものです。暦年課税制度においては、110万円までなら申告不要となっていますので、手間の面でも暦年課税制度に軍配が上がります。

 

・贈与者ごとに選択することができる

相続時精算課税制度はデメリットばかりですが、メリットの一つといえそうなのが、贈与者ごとに選択できる点です。2500万円の非課税と110万円の非課税を横並びにしていますが、実は厳密にいうと違いがあります。相続時精算課税制度は「贈与者ごとに累計2500万円の非課税」、暦年課税制度は「受贈者ごとに毎年110万円の非課税」なのです。暦年課税は贈与を受ける人が毎年110万円まで非課税なので、ある人から100万円、別の人から100万円をもらったら贈与税が発生してしまうのです。ですから、両親がどちらも大金を持っているケースなどでは相続時精算課税制度を検討してみても良いかも知れません。

 

・小規模宅地等の特例を受けられない

相続時精算課税制度のデメリットとしてさらにダメ押しとなるのが、他の特例を受けられない点です。特に、最大80%もの評価減をできる「小規模宅地等の特例」との併用が不可となっており、土地を贈与する際にはよく比較する必要があります。

 

以上、相続時精算課税制度について詳しく紹介しました。主にデメリットばかり紹介することなりましたが、この制度自体、ごく一部の人にしか恩恵のない制度です。ご自身の目でよく確認し、それでも恩恵を受けられそうな場合には選択しても良いかも知れません。

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